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フィリピンの民族が伝統の織りの技術で編み出す生活道具
-四畳半商店-

四畳半商店の店主、百々さんがフィリピンの道具に出会ったのは、20代の時に参加した青年海外協力隊のプロジェクトだった。「フィリピンには、雇用がなくて仕事に就けない、教育が受けられないという問題を抱えている人たちがたくさんいます。ココナッツ農業しか収入源がない町で、ココナッツの殻で亀の雑貨を作り、それを売って生活資金にするというプロジェクトに参加していました」。



そこで百々さんは「マンギャン族」という民族が編んだ生活道具に出会う。彼らはもともと、山で仕事をする時に使うカバンを、自生する植物で編み上げて使っていた。その独特の織りの技術を生かして籠や鍋敷きを作り、生活のために販売しているのだった。

「最初は困っている人を助けたい、という気持ちでしたが、道具を見ると単純に『かっこいい』と思いました。これなら日本でも使えるし、何より、その文化が残ってほしいと思ったんです」。プロジェクトが終了した後も何度も現地に足を運んで商品を仕入れ続け、2017年9月に四畳半商店をスタートさせた。

-Profile- 四畳半商店 百々幸雄さん
2011〜2013年と2014〜2015年の3年間、青年海外協力隊でフィリピンに派遣され、フィリピンの道具に出会う。2017年から四畳半商店をスタートし、生活道具を通してフィリピンや日本の伝統文化の魅力を伝えている。

「四畳半商店」の名前の由来は、「わび茶」の創始者である村田珠光が考案したとされている四畳半の茶室。村田珠光は、「和」と「漢」の境を融和することが肝要であると語っている。「海外の文化を受け入れながら、日本独自の文化も大切にする、という寛容な考えに惹かれました。国はそれぞれ違う文化を持っていますが、どれも人間が作ったもので、根底では同じ。フィリピンの生活道具に出会って、この四畳半茶室を表現したいと思ったんです」と話す。その店頭には、手仕事で生まれた生活の道具が並んでいる。フィリピンの伝統の編みの技術を応用して作られたカゴやブランケット、大正〜昭和に作られた日本の器や雑貨など。生まれた国は違っても、そこに壁はない。

日本の食器やだるま、フィリピンの籠などが同じ空間にディスプレイされている四畳半商店。作品同士がお互いの文化を受け入れているように、違和感がない。

しかし、フィリピンも日本と同様に伝統技術が失われつつあるという。「織物で収入が得られれば、この文化は残るはず。小さな方法だけど、手助けになれば」と百々さん。マンギャン族の人々は、基本的に自給自足の生活だ。生活道具や雑貨は農業の合間に作っているので、作る量も限られる。「電気も水も不足し、仕事の機会や収入の少ない彼らに、文化を残すことを強要するのは難しい。だからといって、これをビジネス化したくはないんです」。

日本仕様にすれば売れることは分かっているが、あくまで彼らの文化から生まれたそのままの道具を知ってもらいたい。それがマンギャン族の雇用と収入を生むなら、それが一番いい、という。

花や山の模様を表現するマンギャン族独特の籠。白と黒は、ニトという蔓の裏表の色をそのまま生かしたもの道具として作られているだけあって、どれも丈夫だ。

「民族にはさまざまな問題はあるけれど、四畳半商店で作品を見る人にはただ、『かっこいい』と感動してくれさえすればいいんです。人助け、なんていう理由をつけると、どこか嘘っぽくなって長続きしない。僕は、彼らが作る文化、アートが好きだからやっているだけです」。

工業製品にも良さはたくさんある。しかし、手仕事に少しだけバランスを寄せて、人が本来作るスピードで生まれる道具に価値を見出してほしいと願っている。

頭を撫でると相槌を打ってくれる「Coco タートル」。フィリピンのミンドロ島で、廃棄されるココナッツの殻を再利用し、地元住民が製作したもの。
タイガーグラスという葉を乾燥させて作られたほうき。フィリピンの伝統的な生活道具のひとつ。
NGOを通じてマンギャン族の人とやりとりを続ける百々さん。「若い世代の人たちも、ぜひ織物を受け継いでほしい」と話す。