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廃材に刻まれた長い歴史が、作品の風格に -創作工房じゅんぼく屋-

テントが並ぶロハスフェスタ会場の中に、小さな「家」が紛れ込んでいる。四角い窓がはめ込まれた古いドアと壁、そしてトタン屋根。中に入ると、木やガラスを使った雑貨、家具、アクセサリーが並ぶ。「創作工房じゅんぼく屋」の作品だ。



じゅんぼく屋では、フォトスタンドや一輪挿し、アクセサリーなどさまざまなオリジナル雑貨を作っている。使われている材料は主に廃材。納屋を解体した後に出る古材やトタン屋根、ステンドグラスの端材、浜辺に打ち上げられた流木などを再度磨いて加工しているのだ。「新しい木にアンティーク加工を加えたり、トタンを薬品で錆びさせたりする方法もありますが、自然の中で何十年と風雪に耐えながら刻まれてきたからこそ見える表情があります。人工的には表現できないその風格を、作品に使いたいと思ったんです」。と話すじゅんぼく屋のご主人で職人の野中さん。

-Profile- じゅんぼく屋 野中淳さん
大工や家具職人、ステンドグラス職人を経験しながら、木材や金物やガラスといったさまざまな素材の扱い方を学び、じゅんぼく屋をスタート。10年以上前に北海道から神戸へ拠点を移し、雑貨から店舗の改装まで、廃材を使ったものづくりを続けている。

新しい材料を使ったほうが製作スピードは上がる。廃材だと、材料の下地を整える作業に手間がかかるからだ。古材は風合いが損なわれない程度に、何種類ものサンドペーパーを使い分けて磨き、それ以上風化させないようにクリアでコーティング。カットして新しい木目が見えた断面は、不自然にならないように木の古い色に合わせて塗装。かかる手間は大きいが、それに応えるように、古材は艶が出てより美しい表情になる。一方で、釘の跡はあえて埋めず、そのままに。「もともと使われていた姿の、手仕事のあとを残したいんです」と野中さん。

小さな家のような、じゅんぼく屋の店構え。もちろん、全て廃材から作られている。

ガラスを使った雑貨も置いている。これもまた、建物の解体時やステンドグラス製作で出た端材を使っている。

大きい端材は色ガラスを組み合わせてステンドグラスの置物に、小さい端材はネックレスに。さらに小さくなると、色ガラスと透明ガラスを組み合わせて焼き戻し、小さな玉にしてアクセサリーを作る。最後の最後まで、「もったいない」で使い切るのが野中さんの流儀だ。

風化したトタンや木材に残る金物や釘の跡は、使われていた当時の姿そのまま。年月を経たからこその風格を味わってほしい。

大工、家具職人と平行して、クラフト作家としても活動している野中さん。じゅんぼく屋をはじめるきっかけになったのは、大工、家具職人の仕事をしていたとき。当時は新しい材料をどんどん使って家具が生産され、端材は大量に捨てられていたという。「良い材料じゃないと良い家具じゃない、という考えでした。でも、料理人なら冷蔵庫の残り物でも美味しく作れますよね。捨てられてしまうような材料でも、アイデアと手間を加えれば存在感のあるものになるんです」。その後、ステンドグラス職人の経験を経て独立。北海道に住んでいた野中さんは、解体された家や納屋から出る廃材が全て薪にされているのを見て「もったいない」と感じ、それらを作品に使い始めた。

作品に使われている廃材には、どこで、どんな風に集めてきたのか、という一つひとつストーリーがある。野中さんに聞いてみるのも面白い。

当時はまだ、カントリー家具が全盛のころ。野中さんが作るアンティーク風の家具や雑貨は、見向きもされなかったという。しかし、一定のお客さんはそこに価値を認め、ファンでありつづけてくれた。野中さんも、スタイルを変えずにじゅんぼく屋を続けてきた。「古さ」が人気を集めている今、野中さんの作品は多くのお客さんから「かわいい」と好評を得るようになった。野中さんは、「ゴミだった足場板や古材などの価値が見直され、リユースできると認識されたことがうれしいですね」としみじみ話す。

全てが手仕事なので、同じ作品はできない。一つひとつの古材の、違った表情を楽しめる。
古材の中には、板前がまな板に使うような高級材も混じっているという。「良い木がゴロゴロあるんですよ。もったいないでしょう」と野中さん。
ガラスを何層かに重ねて焼き戻し、ガラス玉にしてアクセサリーを作る。ガラスの端材を極限まで使い切る。
ステンドグラスの端材を使ったネックレス(1,400円)。ガラスの枠すらも、鉛やスズを使って手作りしている。