日本茶のイメージを覆すような、軽いタッチのイラストが印象的な日本茶専門店「チャボさんのお茶 番茶屋 茶坊」。まるでおしゃれな雑貨店のような店内には、女性客を中心に、幅広い年代のお客さんがひっきりなしに出入りする。
日本茶のイメージを覆すような、軽いタッチのイラストが印象的な日本茶専門店「チャボさんのお茶 番茶屋 茶坊」。まるでおしゃれな雑貨店のような店内には、女性客を中心に、幅広い年代のお客さんがひっきりなしに出入りする。
始まりは2013年。店主の塚尾さんが、実家の日本茶専門店「番茶屋」を継ぎ、2016年から「番茶屋 茶坊」という新たな店名で再スタートさせた。「日本茶を茶葉から淹れる人は減ってきています。それでも、ペットボトルのお茶は数多く売られているし、お茶を飲まない人はほとんどいないはず。茶葉からお茶を淹れて飲むスタイルを、もう一度広めたいと思っています」と話す塚尾さん。「急須でお茶を淹れる」ことに抵抗がある人たちに、手間を省いたティーバッグの日本茶を提案し、幅広い層からの支持を得ている。
販売している茶葉は、大きく分けて煎茶、ほうじ茶、玄米茶の3種類。全てオリジナルのブレンドだ。「日本茶の世界は、飲み方や作法などのこだわりが強い。でも、それではお客さんとの間に距離が生まれてしまいます。もっと手軽に飲んでもらいたいので、当店では、マグカップにティーバッグを入れて水やお湯を注いで、薄くなるまで飲んでください、と伝えています」。ティーバッグでも香りやコクが出やすい茶葉を選び、焙煎度合いやブレンドを調整しているという。
商品作りを始めた当初は、茶坊の新たな試みに、歴史ある問屋や日本茶業界からは批判もあったという。ティーバッグ一つを作るにも、これまでと違う重さで作ることにこだわったため、加工業者に断られたこともあった。しかし、押しの一手で実現させた。「お手頃な価格と味を両立させるために、これまでとは違う規格で商品を作る必要がありました。僕自身が素人目線から入っていったので、もっとこうしたらいいのに、と思うことがたくさんあったんです」。そこにあるのは、徹底した顧客目線だ。
客目線は、商品のパッケージデザインにも現れている。女性が好みそうなイラストとカラー、やさしい言葉で紡がれたコンセプト、どれをとっても親しみやすい。「かわいいからという理由で購入いただくお客さんも多いです。それが入り口になって、日本茶の美味しさに気づき、最終的には毎日飲むようになる。それがうれしいですね」。茶葉の提供の仕方から飲み方、パッケージデザインまで、伝統的な日本茶の世界に、これまでとは異なるお茶の楽しみ方を持ち込んでいる。
最近では、親子連れて店に訪れ、子どもが日本茶を買ってほしいとねだる姿も見られるという。そんな塚尾さんの考えは、「お茶はあくまで脇役」というもの。「お茶は、ご飯を食べるとき、仕事や家事の合間、趣味のひととき・・・そんな日常にあるもの。作り方や作法にこだわらなくてもいいんです。気軽に飲んで、茶葉で淹れたお茶のおいしさを堪能してください」。