ゆるいイラストが放つ不思議な魅力と親しみやすさ-motif-

「陶磁器は高価なイメージがあるかもしれませんが、どんどん普段使いしてほしい」と語るmotifの進藤さん。彼女が一つひとつ手描きした「絵付け」は、透明感のある器に不思議な魅力と親しみやすさを加えている。

進藤さんが手がける作品は、白磁らしい乳白色の器に、どこかコミカルさを感じる可愛らしい絵付けが特徴だ。最高1200℃を超える電気釜で焼き上げ、ガラスのように透明感のある質感を生み出している。

質感や色合いが作品によって微妙に異なるのは、焼き上げる前に表面に塗る釉薬の選び方や組み合わせ、あるいは焼き方の違いによるものだという。そんな微妙な違いを見比べられる点も、器選びの楽しさの一つだ。

-Profile- motif 進藤純子さん
陶芸家を志したのは、自分で形を作って表現する点に楽しさを感じていたことと、地元の島根県で近所に住んでいた陶芸家の影響が大きかったそう。

陶磁器づくりを始めたのは、美術系の短大に通っていた20年前までさかのぼるという進藤さん。短大で基礎を学んだ後は、陶芸教室で働きながら腕を磨き続けた。子育てを機に離れていた時期はあるが、2017年頃に製作を再開。それを機に改めて絵付けの指導を受けるなど、一から勉強し直したという。

見ていて楽しいイラストや模様は、進藤さんが絵筆で丁寧に描きあげている。イラストのモチーフにしているのは、各国の童話をはじめ、進藤さん自身が大好きな三国志のエピソードや、ご主人が愛してやまないプロレスなどさまざま。

全て同じ色のように見えて、よく観察してみると色味や質感が微妙に異なっている。屋外イベントでは豆皿や箸置きなどの小物が人気。

「一見、古物かと思ったら、『変なイラストが描いてある！』という意外性がウケているのかもしれません。最初はイラストに興味をもって購入してくれたお客さんも、次は『器自体に魅力を感じて』購入してくださる方もいらっしゃいます」。

「手作りの陶磁器は、値が張るイメージがあるかもしれません。でも、どんな器に盛りつけるのかで料理の味は変わりますし、お気に入りの器を見つけて、どんどん普段使いをしてほしいなと思います」と語る進藤さん。

好きな器で食事をすれば残さず食べることにもつながるし、長く大切に使うことで結果的にゴミを減らすことにもつながる。お気に入りの器とめぐり会うことで、そんな好循環にもつながれば――。進藤さんは自身の作品にそんな密かな思いも込めているという。

こちらの「波乗りシリーズ」だけで何種類もの作品があるそう。

コップや茶碗を顔に見立てたシリーズ。アンニュイな表情が面白い。