黒一色、シンプルなワイヤーで作り上げた一輪の花。ハシビロコウやマンボウなど、緻密な立体を作り上げるmaru lien キズナの好光さん。無機質なワイヤーが生命感あふれる作品に生まれ変わり、多くの人を引き付けている。
黒一色、シンプルなワイヤーで作り上げた一輪の花。ハシビロコウやマンボウなど、緻密な立体を作り上げるmaru lien キズナの好光さん。無機質なワイヤーが生命感あふれる作品に生まれ変わり、多くの人を引き付けている。
好光さんが作るのは動物や楽器、車などをモチーフにしたワイヤーアートだ。材料にはワイヤーのみを使い、ペンチとニッパーで仕上げる。一見シンプルな作業に見えるが細かなバランス調整が必要になる。
「モチーフの写真を見て、頭の中で立体を描きながら作っていきます。写真はあくまで平面ですから、立体をイメージしながらバランスやサイズ感を少しずつ調整しています。すぐ完成形をイメージできるわけではなくて、作りながら考えています。でもそうやって、頭の中で考えながら作るのがとても楽しいところです」と好光さんは語る。
オーダー制作も行っている好光さん。ペットや楽器、愛車など作品に応じて、4種類のワイヤーを使い分けながら仕上げていく。曲げること自体は簡単なワイヤーアートだが、終わりはなく、好光さん自身が納得できるまで延々と微調整を続けることもある。完成したワイヤーアートをお客に送り、その後感想をもらうなどの交流が生まれて、広がっていくことにとてもやりがいを感じているのだとか。
12年前に木工の雑貨を作るアーティストとして活動を始めた好光さん。今でも木工制作を続けながら、ワイヤーアートを制作している。きっかけは、たまたま雑貨店で見つけた作品に触発されたことだった。「初めのころは、あくまで自分が好きなものを飾るために作っていました」。
大きな転機となったのは、ハシビロコウの作品を作ったことだ。2年前に愛媛の山手に古民家を購入し、アトリエを開いた。そのときに、「看板犬みたいな作品を作ろう」と考え、友人のすすめでハシビロコウを作ることに。完成品をSNSに投稿したところ、大きな反響を得られた。「コロナ禍で、インテリアや雑貨の需要が高まっているときでした。たくさんの人にアトリエまで足を運んでもらって『動物園みたい』と言ってもらえたんです。アトリエがきっかけでオーダーしてくれる人も増えました」。
今後挑戦したいことを尋ねると、「ワイヤーアートの移動動物園」だという好光さん。例えばトラックの荷室を木や草で飾り、そこにワイヤーで作った動物たちを展示するイメージだそう。「幼稚園や介護施設に訪問して、楽しんでもらえたら」と語る。また、簡単な道具さえあれば制作できる点を生かして、ワークショップも開いてみたいそう。今後も人との交流を重ねながら、作品の幅を広げていく。