「実は雨水はきれいな水」。そう聞いただけで納得できる人はどれだけいるだろうか。「そのままでは飲めない」「汚れている」といったイメージをしがちだが、雨水は生活に欠かせない淡水資源の源でもある。自然の恵みを暮らしのさまざまな場面で活用させるべく、「あまみず飲料化プロジェクト」に取り組む福井工業大学の笠井教授に話を聞いた。
「実は雨水はきれいな水」。そう聞いただけで納得できる人はどれだけいるだろうか。「そのままでは飲めない」「汚れている」といったイメージをしがちだが、雨水は生活に欠かせない淡水資源の源でもある。自然の恵みを暮らしのさまざまな場面で活用させるべく、「あまみず飲料化プロジェクト」に取り組む福井工業大学の笠井教授に話を聞いた。
笠井教授たちが作った「あまみずドリンク」の原料は、その名の通り自然に降った雨水。もちろん水質検査をクリアした安全に飲める水だ。雨の日を狙って大学構内のウッドデッキに貼ったビニールシートから雨水を集め、浄水設備で浄化したのち、専門業者の工場でソーダやサイダーなどのドリンクへと姿を変える。
笠井教授によると、雨水に「水質が悪いのでは」というイメージを抱く人は多いそう。「確かに降り始めの雨は空気中の汚れを含んでいますが、本降りになってからの雨水は実はきれいなんです。ただ、悪いイメージを覆すには、水質検査のデータを示すだけでは足りません。実際に体験することが一番です」と語る。あまみずドリンクを実際に飲んでみて「おいしい!」と感じてもらうことで、「実は雨水はきれいな水で、自分たちが暮らしの中で使っている水も雨水からできている」という説明も伝わりやすくなるという。
雨水の活用を促進するツールとして開発した「あまみずドリンク」は、その発信方法にもこだわる。同大学のデザイン学科の近藤准教授にも協力をあおぎ、雨の雫をモチーフにした印象的なラベルを作成した。その他にも、笠井教授や学生たちが雨水を収集する様子やドリンクの製造工程などを動画で記録し、プロモーションなどに利用している。笠井教授が「どれだけ良い取り組みであっても、魅せ方が良くなければ振り向いてくれない」と話すように、魅せ方に一役買っている功労者というわけだ。
笠井さんが目指すのは、雨水を溜めて活用することが当たり前になる社会だ。「ドリンクは雨水利用の究極形です。その前段階として、生活利用から始めれば抵抗感は少ないと思います。トイレや洗濯に使う水なら飲める水にする必要はありませんし、これらの用途は私たちの生活用水の約3分の1を占めます。ですから、コンセンサスを得やすいと考えています」。
笠井さんは研究活動のかたわら、前述した広報活動や環境教育にも力を入れている。その一環で参加したロハスフェスタでの出展について伺うと、「私たちの説明を聞いたり、パネルの展示を見たりして、『雨水ってこんな風に使えるんだ!』と素直に驚く人が多いですね。来場したお子さんから『これから雨水の時代が来るかも!』とうれしい感想もいただきました」と語り、地道に続けてきた活動に手応えを感じている様子だ。
「私たちのプロジェクトは、SDGsで掲げる目標の[6:安全な水とトイレを世界中に]、[11: 住み続けられるまちづくりを]、[13:気候変動に具体的な対策を]と深く関わっています。気候変動はどんどん極端になっていて、豪雨や渇水による被害が各地で広がっています」と指摘する笠井教授。雨水を活用する一例として、公共施設に設置した雨水を溜めるタンクの水量をモニタリングして、災害による断水が発生したときに近隣住民へ配布できる仕組みづくりを進めているところだ。最終的な目標である「雨水の活用が当たり前の社会」へ向けて、着実に前進を続けている。