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陶器のかけらを伝統技法でつないだ、唯一無二のアクセサリー -engrace-

どこか親しみ深さを感じる色使いや花柄模様に、金の流線や天然石の輝きが合わさったアクセサリーの数々は、小ぶりなサイズ感とは裏腹に強い存在感を放っている。そんなユニークな作品を手掛けているのは、engrace(エングレース) の赤沼さん。彼女が持つものづくりへのこだわりを聞いた。



赤沼さんが手掛ける「金継ぎアクセサリー」の素材となるのは、日本各地で作られた焼き物の数々。割れたり欠けたりした焼き物を陶芸家から買い取り、さらに細かい陶片へと砕いたあと、丁寧に研磨して天然石やパールなどと組み合わせる。製作するアクセサリーの種類は多彩で、イヤリング・帯留め・ブローチのような女性向けのものから、ネクタイピンやカフスなど男性向けのものまである。贈答用で買い求める人が多い一方で、結婚の周年記念として、同じ陶器から夫婦ペアのアクセサリーをオーダーする人も多いとのことだ。

-Profile- engrace 赤沼奈津香さん
ブランド名は、「縁」と「grace(=しなやかさ)」を掛け合わせた造語。「すべての人やものはつながっている」という思いを、一つ一つの作品に込めている。

陶片と異なる素材をつなぐ際には、日本の伝統技法である「金継ぎ」を施している。本来は、割れた器を漆でつなぎ、金や銀で継ぎ目を装飾する技法を、アクセサリー製作に応用した。ちなみに、engraceのアクセサリー製作で採用している金継ぎは、現代版にアレンジが施された方法で、肌がかぶれにくい合成漆や真鍮とパールをブレンドした金粉を材料に用いている。焼き物の柄が醸し出す和のテイストが、金継ぎの模様や天然石の輝きと合わさることで、唯一無二の逸品ができあがる。

和と洋の素材がつながったアクセサリーは、さまざまな服やシーンに応じて、変幻自在の輝きを放つ。

素材となる焼き物の種類は、唐津焼・織部焼・備前焼・有田焼(伊万里焼)・信楽焼・京焼の6種類。「マルシェに出店した際、素敵な焼き物を見つけたら、割れた陶片をゆずってもらえないか直接交渉することもあります」と語るように、今後も増える勢いだ。
「本来、陶片は産業廃棄物として処分されます。ですが、器としての価値はなくても、もともとは陶芸家さんがこだわって作ったもの」と語る赤沼さん。有田焼の色使いや備前焼の素朴な質感など、産地ごとの特徴や陶芸家の作風を引き出せるように心がけているという。

自宅のアクセサリー置きは、陶片と同じ産地の焼き物でそろえるのも楽しい。

赤沼さんは、アクセサリーの製作以外に、ワークショップの開催にも力を入れている。いろいろな焼き物や天然石の中から自分だけのアクセサリーを制作する体験は、廃棄されるはずだった陶片を自分の手でアップサイクルさせる場でもあり、創作活動の楽しさに触れられる場でもある。engraceの金継ぎアクセサリーには、「日本の伝統技術を身近に感じてほしい」という赤沼さんの思いが込められている。

陶片の色や形はそれぞれ異なるため、手に取ったその商品は世界に一つだけのものといえる。