実家にあった古布を見て藍染に興味を持ったことをきっかけに、染め師、作家の道へ。「藍染は伝統文化ですが、若い人たちに身につけてほしい」と、服、ストール、バッグ、アクセサリー、レース、帽子など多様なアイテムを藍で染め、販売する。
実家にあった古布を見て藍染に興味を持ったことをきっかけに、染め師、作家の道へ。「藍染は伝統文化ですが、若い人たちに身につけてほしい」と、服、ストール、バッグ、アクセサリー、レース、帽子など多様なアイテムを藍で染め、販売する。
ロハスフェスタ東京の会場、光が丘公園の豊かな緑と、青い空、秋風にたなびく藍染のストールがとても爽やかな印象を醸し出している「本建て正藍染あいり」のブース。店主の淺倉理恵さんが、「太陽の光を当てるとさらに綺麗に見えるんですよ」とストールを手に取って見せてくれる。販売する藍染のアイテムはすべて淺倉さんが染めている。気になるのは、「あいり」という工房名に付く「本建て正藍染」という言葉だ。「『本建て』とは、温度管理を行いながら、微生物の働きによって発酵した染め液のことです。その染め液を使い、日本古来の技法で染めたものを『正藍染』と言います」と教えてくれた。つまり、化学薬品などを使わず、天然の材料だけで染め上げた正真正銘の藍染ということだ。
淺倉さんは続けて、「本建て正藍染」の染め方を説明してくれた。「まず、原料である蒅(すくも)は真夏の太陽の下無農薬の畑で育てた蓼藍(たであい)を育て収穫した後、葉と茎に選別し100日間かけ堆肥状になるまで灼熱の熱さの中作ります。この作業は、天気に左右されやすく藍師と呼ばれる職人が丹精込めて作って下さります。本建てとは、その蒅と、木灰(広葉樹)に工房近くの茨城県筑波山麓の天然水を撹拌してつくる灰汁を原料に、古来の技法で温度を調整しながらじっくり微生物の力によって醗酵してできる染液の技法です。本建ての染液で染めたものを正藍染といいます」。
話す言葉に藍染への深い愛情が感じられる淺倉さん。藍染を始めたのは6年前のことだった。実家にある古布の藍染に、青く色落ちする藍染と黄色味が出る藍染がある事に気付き、調べたところ藍染には化学染料で染めた物と発酵してできる染液がある事を知った。発酵に興味を持った淺倉さんは本建て正藍染の藍染師・大川公一先生の工房がある栃木県佐野市を訪れた。「大川先生は日本古来の藍染の技法を多くの人に伝え残そうと、生徒を募って講習会が開かれ私は16期生として参加しました。先生が藍の甕から取り出した生地を水洗いし、広げた瞬間、美しく染まった鮮やかな色に魅力され、自分でも地元茨城県石岡市が昔、藍が盛んな時代もあった事から、自ら工房を作り始めました」と、淺倉さんは藍染の世界に飛び込んだきっかけを話す。
大川先生から教わった技法の一つに「籠染め」がある。「大川先生のお父様が考案されたもので、私も受け継ぎました。花弁のような模様に美しさを感じます」と、淺倉さんは籠染めで染めたバッグやアクセサリーを見せてくれた。淺倉さんはさまざまなアイテムを販売しているが、生地を染め、アイテムをデザインした上で、バッグ作家やアクセサリー作家、レース作家、帽子作家などに制作を依頼し、コラボレーションして作っているそうだ。ストールだと1万円台のものが多く、比較的リーズナブルな価格設定なのもうれしい。「藍染は日本の伝統文化ですが、堅苦しく考えず、ぜひ若い方々に身につけていただきたいです。本建ての染液で染めた商品は肌にやさしく、紫外線を防いだり、血流の循環を良くしたりといった効能もありますよ」と話す淺倉さん。一つ一つ微妙に異なる模様に染め上がる一点ものの価値を気軽に身につけ、楽しんでみてほしい。