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海からのメッセージに、彩り鮮やかなアップサイクルでアンサーを -AHORA-

濃淡さまざまな色彩が混じり合うマーブル模様が描かれた時計。これは、対馬の海岸に流れ着いたプラスチックから生まれた作品だ。「もともとゴミとして放置されていたもの。その色合いをどう活かすか、ずっと考えてきました」。そう語るのは、AHORA(アオーラ)の阿比留大貴さん。海が運んできた環境問題と向き合い、たどり着いた答えを聞いた。



 大阪で生まれ育った阿比留さんは、幼いころから父の故郷である対馬に何度も訪れていた。「そのころの海は、ただただきれいな場所でした」と振り返る。社会人になってからもWebエンジニアとして働くかたわら、ライフワークのダイビングで世界中を巡り、海に親しむ暮らしを送っていた。
 転機が訪れたのは3年前に対馬を訪れた時。目の当たりにしたのは、海岸を埋め尽くすほどのゴミの山だった。漁具のカゴやブイ、ポリタンク。海流の通り道にあたる対馬にはさまざまな漂着物が流れ着く。「自分のルーツでこんなことが起きているなんて、これは黙っていられないなと。すぐに島への移住を決意しました」。しかし、ボランティアとしてただゴミを拾うだけでは、集めたゴミが最終的に島のクリーンセンターに運ばれ、結果的に処理施設の負担を増やしてしまうという限界に気づく。大がかりな設備を持たない個人でも、この厄介者をどうにかできないかーー。

-Profile-
大阪府出身、長崎県対馬市在住。スキューバダイバー・フリーダイバーとして世界各地の海を潜り、働きながら全国を旅する生活を経験。その中で見えてきた海洋ゴミ問題に対し、多くの海洋ゴミが流れ着く対馬を拠点にモノづくりに取り組んでいる。2026年に「第2回 LOHAS Festa Award グランプリ」を受賞。

 そして阿比留さんは、自然には還らない漂着物を「ゴミ」と扱うのではなく「資源」として活用できないか考えはじめた。そのヒントとなったのが、たまたま参加した海洋プラスチックをアップサイクルするペン作りのワークショップだった。個人の手でもゴミを価値あるモノに変えられると知った阿比留さんは、自らも「ものづくり」の道へと踏み出した。
  「昔から自分でいろいろ作るのは得意でした」と振り返る阿比留さん。ペン作りの体験は、Webエンジニアとして働いていた彼に、小学生の時のような創作意欲を呼び覚ました。そうしてまずは、資源を活用したものづくりに着手。最初に作ろうと試みたのは、建築資材になる板材だった。だが思うようにいかず苦戦が続き、考え方を変えてみることに。「海洋ゴミの問題を幅広く知ってもらうために、いろんな人に興味を持ってもらえるものにしようと考えました。そこで、時計やアクセサリーがいいんじゃないかと」。そしてたどり着いたのが、現在AHORAのブランドで提供している作品だ。

美しい対馬の海

 阿比留さんが何よりこだわっているのは、彩りの豊かさ。素材のプラスチックに追加の着色は一切しない。漁業用のブイの赤、カゴの白、ポリタンクの青といったように、元の素材を生かし、狙った色合いをつくり出していく。「例えば、木製の製品と比べたとき、プラスチック素材の魅力って『色』だなと思ったんです」。赤で彩るなら、燃え盛るような強さやエネルギー。色にはそんなメッセージも込めているという。それでいて同じ模様は二つとなく、「受け取った人が思い思いに解釈してほしいですね」と阿比留さんは語る。

対馬に流れ着いたゴミの山

 その唯一無二の色は、海を越えても人を惹きつける。昨年11月にはニューヨークで共同個展に参加し、現地で代理販売の話まで持ちかけられた。「最初は色彩にひきつけられて足を止めてくれて、素材や背景にある課題を説明するとより強い興味を示してくれる方が多いですね」。もとは海洋ゴミだったというバックストーリーが、作品の奥行きをさらに深めている。 阿比留さんにとって、「ものづくりはあくまで手段」だという。作品を通じて海洋ゴミの現状を伝えることを大きな目的に据えている。そのために大切にしているのが、国境を越えたつながりだ。アメリカでの個展に加え、昨年は韓国のアーティストを対馬に招き、共同制作を行うアートイベントを開いた。
 「海ゴミ問題の解決は、人の輪が広がらないと難しいと考えています。自分の活動が、一人ひとりの行動を少しずつ変えていくことにつながれば」。海岸に流れ着いた厄介者は、阿比留さんの手でアートへと姿を変え、人から人へのつながりを広げていく。その先に見えるのは、子どものころに見たあの美しい海の風景だ。