かわいくて懐かしい雑貨が色とりどりに並び、眺めるだけでもワクワクさせてくれるsucre(シュクル)。
かわいくて懐かしい雑貨が色とりどりに並び、眺めるだけでもワクワクさせてくれるsucre(シュクル)。
1970〜1980年代のヨーロッパの生地を使って手作りした財布やポーチ、昭和時代の日本の食器、ヨーロッパのヴィンテージ壁紙で作った封筒など、国も時代もさまざまだが、通じるところがあってどこか懐かしい。
もともとは、お気に入りの生地を使って雑貨を作り始めたことがきっかけだった。「とにかく生地が大好きで。大きな一枚の生地のどの部分をとって何を作るかを考えるのが楽しいです」と作家の田中さん。小さい柄なら財布に、大きい柄ならカバンに。生地が一番生き生きとするように、向きや取り方を工夫しているという。ハギレは、小さなくるみボタンやファブリックシールなどに活用し、余すところなく使い切る。このエピソードが、田中さんの生地愛の深さを物語っている。
こうした生地はもともと、ヨーロッパで使われていたシーツが出回って、日本にたどり着いたものが多いという。「一枚のシーツを人から人へ使い続けるという風習は、日本にはありません。でも、国も時代も違う人に受け継がれて、大切に使われ続けるって、素敵だと思うんです」。店頭に並ぶ日本の食器もまた、昔から使われてきたもの。中には、傷が入っていたり欠けたりしているものもあるが、お客さんも「それがいいんです」と購入していくという。古さの中にある味わい深さやあたたかさに魅了されているのだろう。
生地を使った雑貨は、工業用ミシンで丁寧に縫製されているが、あとで修理ができるようにシンプルな縫製にしているという。「時々お客さんが『ここを直してください』とカバンなどを持ってこられます。それだけ長く使いたいと思ってくれているということ。その気持ちがうれしいので、私にできることはしたいと思っています」。作品が長持ちするほど、古いヨーロッパの生地も長生きできる。
sucreには骨董品以外にもう一つ、人気の作品がある。それが、パンのマグネットだ。
フランスパンにあんぱん、メロンパン、クロワッサンと、種類も豊富。全て、小麦粉とイースト、水、砂糖、塩と、本物のパンと同じ材料から作られている。見た目もパンそのもの。美味しそうな焦げ目がついて、香りまで漂ってきそうだ。しかし、作り始めた当初は本物のパンには見えず、お客さんからも「粘土ですよね」と言われてしまったという。
「ベーカリーに聞くと、しっかり発酵させてないと焼き色が付かないそうです。今は、温度や湿度に気をつけながら、水の温度と材料の分量も調整して作っています」と田中さん。本当のパン職人並みの製法で、最近はたくさんのお客さんに「美味しそう」と言ってもらえるまでになった。
店頭にパンのマグネットが並ぶと、家族づれやカップルが次々にやって来ては好みのパンを選び、買っていく。「お子さんが250円を握りしめて買いに来てくれたり、友達同士で分けっこしたり、家族でそれぞれ別の種類を買ってくれたり。楽しんで選んでくれて、そこから会話や笑顔が生まれるのが何よりうれしいです」。小さな雑貨が、小さな幸せを生んでいる。