オレンジにイチゴ、キウイにスイカまで。色とりどりの果物を透明樹脂に閉じ込めたスマホケースや箸置き、コースターを制作する「astin muhler(アスティンムーラー)」。独自技術によって発色も形状もそのままに美しい果物の魅力を最大限に引き出している。
オレンジにイチゴ、キウイにスイカまで。色とりどりの果物を透明樹脂に閉じ込めたスマホケースや箸置き、コースターを制作する「astin muhler(アスティンムーラー)」。独自技術によって発色も形状もそのままに美しい果物の魅力を最大限に引き出している。
「ドライフラワーを使った商品はあっても、フルーツは見たことがありませんでした」と作品のアイデアを思いついた高桑さんは、2016年から主婦業の傍ら制作を開始。果物はほとんどが水分でできているため、乾燥させるのはドライフラワーを作るよりも遥かに難しかったそう。そして試行錯誤を重ね、ついに独自の製法を考案。
「薄く切った果物を何度も紙で挟んで吸水し、半日~1日でドライフルーツを作ります。早くしないと色が抜けてしまいますから」。着色はせず果物本来の鮮やかさを保つという。果物の数だけ性質が異なるため、乾燥で使用する紙の種類や吸水時間まで全て変える。また、イチゴの品種によって粒の色が違うので粒の白い果実を厳選し、粒に色がつかないよう仕上げている。
“鮮度が命”の果物は作業当日に購入。スーパーを何軒も回り、身の詰まり具合やサイズ、色など細かくチェックするという。「『この果物ならこの店』と把握しています。実際に切ってみて満足できないものは使いません。妥協したくないですから」。かわいらしい見た目からは想像できない、研究者のような探求心と職人のようなこだわりがちりばめられた作品は、もはや芸術品だ。
全て自前でドライフルーツを作っているのでコストを抑えられ、サイズから配置、組み合わせまできめ細やかなオーダーメードも可能。やり取りの中で聞こえてくるお客さんの声も大事にしている。
「スマホケースを買っていただいた方に『黒のスマホに使うとフルーツの色が悪くて残念だった』と言われたので、色が透けないものも作りました」。誠実な仕事をするうちに、新しい出会いもあった。「ナッツやリンゴなどの農家の方から『うちのを使ってもらえませんか?』と声をかけていただいて、コラボ商品にも挑戦しています」。
人気の裏で困ったことも。インスタグラムに載せたら一瞬で広まり、特に海外で類似品が出回っているのだとか。しかし見た目は取り繕えても、品質までは絶対に真似できない自信がある。「今でも完成していない」と日々進化する技術とともに生み出される作品から目が離せない。