ピクルス屋が売るのは、ピクルスそのものではなく、化学調味料や保存料などの添加物を一切使わないピクルス液。「忙しい家庭でも、手作りのあたたかさを実感してほしい」と、野菜を切って液に漬けるという、最後の仕上げだけはお客に任せている。
ピクルス屋が売るのは、ピクルスそのものではなく、化学調味料や保存料などの添加物を一切使わないピクルス液。「忙しい家庭でも、手作りのあたたかさを実感してほしい」と、野菜を切って液に漬けるという、最後の仕上げだけはお客に任せている。
ピクルス屋はもともと、「もったいない精神」から始まった。「本社のある奈良県は自然が豊かで、昔から農業が盛んです。しかし、農業が自然の恵みをもたらす反面、売れ残った野菜は大量に廃棄されてしまう。廃棄が少しでも減ってほしいという願いから、野菜を上手に使って、おいしく食べられる商品を作れないかと考えました」と話すのは、ピクルス液の製造を担当している福永さん。
ピクルス液には、化学調味料や保存料などの添加物を一切使わない。四段仕込み製法で仕上げた地酒やさらっとした甘さが特徴のオーガニックの砂糖、甘味や風味の強い天然のはちみつなど、素材のこだわりを挙げればキリがない。もちろん、味の決め手となる酢へのこだわりも強い。ピクルス屋の地元である奈良県の老舗で、昔ながらの静置発酵で長期間熟成させた黒酢や、青森県津軽産のりんごをすりおろして発酵させたリンゴ酢などを使用。自然に発酵していく時間を大切に、じっくりと作られた素材を使っているためか、ピクルス液には酢によくあるツンとした刺激はなく、まろやかでやさしい甘味を感じる。後味も良く、口に入れるとスッと体に溶け込んでいくようだ。現在も、素材を少しずつ有機栽培や無農薬栽培のものに切り替えているという。
最初は、「ピクルス液では受け入れてもらえないのではないか」という心配から、ドリンクタイプの酢を中心に販売していた。しかし、「ロハスフェスタに出店したとき、驚くほどみなさんが『おいしい』と言ってくださって。今ではピクルス液が商品の中心になりました」と福永さん。もっと楽しんでほしいと、漬け終わった後のピクルス液を使った料理のレシピなどを日々SNSで発信している。「お酢を使うと保存食になりますし、塩分を控えられるので体にもいいですよ」。
種類は、ベーシックな「スイートブラックビネガー」をはじめ「黒酢黒糖」や「利尻昆布」、「はちみつ柚子」、「みかんミント」など計9種類。ただ味が違うだけではなく、「スイートブラックビネガーをベースに、それぞれに合った酢や砂糖を選び、配合も変えている。「出来上がった後も試行錯誤してマイナーチェンジを繰り返し、よりおいしいピクルス液を目指しています」。液そのものに自信があるので、店頭ではピクルスの試食ではなく、ピクルス液だけを味見してもらっているという。
「人の手を加えすぎない」ことをモットーにしているため、包装紙も簡易化。自然にこだわった商品づくりで、自然との共生を目指す。「お客さんに『おいしい』と言っていただけるのが、僕のビタミン。ピクルスで、ほっこりした時間を過ごしてください」。