草花の生き生きとした表情や艶を残し、リースやスワッグ、ブーケなどを作る「watashitachistock」。ドライフラワーとは一線を画す、自然が持つ瑞々しさ閉じ込めた“かわきばな”を生み出すのは、その繊細さに魅了された辻村順志さんと禎子さんの二人。
草花の生き生きとした表情や艶を残し、リースやスワッグ、ブーケなどを作る「watashitachistock」。ドライフラワーとは一線を画す、自然が持つ瑞々しさ閉じ込めた“かわきばな”を生み出すのは、その繊細さに魅了された辻村順志さんと禎子さんの二人。
何気なく訪れた展示イベントで“かわきばな”に出会った。「まるで葉っぱの一枚一枚が生きているように見えて、本当に衝撃を受けました。僕もこの“かわきばな”を作りたいと心から思いましたね」と話す順志さんは、仕事の傍ら、“かわきばな”の教室に通うようになった。
もともと自然に関連する仕事に就きたかったという二人は、その魅力に気づき、自宅の一角に実験場を作ったという。「仕事や食事の時以外は、“かわきばな”に向き合いました」と語るほど、昼夜を問わず、持ち帰った草花を実験場に持ち込み、試行錯誤を重ねていった。
ドライフラワーとは違い、草花が生きているような瑞々しさや艶を残すためには、その植物が持つ水分量や生態をしっかりと見極めた上で、それに相応しい乾かし方をしなければいけないという。「例えば、同じ植物でも成育段階によって乾かし方が異なります。吊るした方がいいとか立たせたままとか、状態を見ながら判断をしていきます。最初は、その頃合いを判断するのが難しくてなかなか思うような仕上がりにはなりませんでしたね」と禎子さん。そうした苦労の末、陽のあて方や湿度によって草花の色づきを調整できるようになったという。「自然に咲く草花と同じ色ではなくて、“かわきばな”だからこそ表現できる色づき加減にすることで、独特の瑞々しさを表現できるんです」という順志さん。
草花を乾燥させる技術を習得すると同時に、リースやスワッグ、ブーケなどに仕上げる時の束ね方にも色々な苦労があったという。「束ねるだけでもそれなりの形になります。だけど、それではただのドライフラワーなんですよね。葉っぱが息づき、ちょうどよい水分を残した草花の表情が際立つように向きや角度を工夫して束ねていく。それによって、風をまとったような“かわきばな”らしさが生まれるのです」と順志さん。草花の乾燥度、形状、色づき、組み合わせる順序もイメージしながら束ねていくことで“風をまとった表情”が立ち上がるそう。
主に、同じ“かわきばな”を手掛ける方々との展示会や、自然に関するイベントなどで販売を行う「watashitachistock」。「ひとつの植物を乾燥させるのに、種類や状態によって1ヶ月から3ヶ月ほど時間が掛かります。量産できないからこそ、丁寧に草花の表情を引き出す仕事を大切にしたいですね」と二人。新たなビジョンとして、他のアーティストの作品とコラボをして新たな魅力を引き出せるようなイベントも計画中だ。“かわきばな”に魅せられた、辻村ご夫妻が次に生み出す作品に注目していきたい。