まるで、童話の世界を思わせるようなやさしいデザイン。そこに、使い勝手を意識した機能性をもたせることで生まれる、数々の食器や花器などの陶器たち。その独特な優しい魅力を放つ作品を作るのは、山下さん夫婦による陶磁器ユニット「kiki工房」だ。
まるで、童話の世界を思わせるようなやさしいデザイン。そこに、使い勝手を意識した機能性をもたせることで生まれる、数々の食器や花器などの陶器たち。その独特な優しい魅力を放つ作品を作るのは、山下さん夫婦による陶磁器ユニット「kiki工房」だ。
山下宏樹さんが陶芸に出会ったのは中学生の頃。偶然入部した陶芸部でその魅力に気づき、社会人になってからも趣味として陶芸を続けていたという。そんな宏樹さんに心境の変化が訪れたのは、自身の仕事に対するひとつの思いがきっかけだった。当時、公共建築を手掛ける設計士だった宏樹さん。「設計から完成まで数年ほどかかってしまう仕事が多い中で、陶芸は思い立ったらすぐに形になる。その魅力を意識するようになってからは、もう趣味のままでは物足りないと思ったんです」。その思いから、宏樹さんは仕事を辞め、陶芸教室の講師という新たな職を得て、陶芸活動を本格的にスタートさせた。
当初は、今の作品とは違い伝統的な和食器を数多く手掛けていたという宏樹さん。今につながるデザインを取り入れるようになったのは、奥様であるマキコさんと共作をするようになってからだという。「妻は、印刷物や店内ディスプレイを手掛けるデザイナーでしたので、発想が豊かなんです。それに影響され、『デザインはこんなに自由でいいんだ』と気付き、どんどん変化していったんです」と宏樹さん。
それ以来、和のテイストを残しながらも、やさしさ溢れる作品が次々と誕生することに。その中で、宏樹さんがこだわったのは、機能性を持たせることだったという。「食器や花器、蓋モノなど、何かしらの用途に使用するものはちゃんと機能的かどうかを重要視しています。ただ見た目がキレイでは終わらせないのが、私達の作品の特徴ですね」と話す。そうした機能面を検証する際に役立ったのが設計士としてのスキル。建築的な意匠と機能性。この2つを両立させる技能が作品のひとつ一つに注ぎ込まれているのだ。
「全て手作りなので、同じ作品でも微妙に形や色が異なるところも面白いと思ってほしいですね」という宏樹さん。作品は大人だけではなく、子どもにも人気となり、今では個展やイベントをはじめ、日本各地の雑貨店、商業施設などでも販売され、その魅力は広がり続けている。