カットしたワインボトルとダメージ加工した木材を組み合わせたスピーカーは、まるでヴィンテージ家具のようなレトロなたたずまいが印象的だ。電源不要で、スマートフォンから発する音色をクリアに増幅してくれるこの作品は、三重県で活動する作家の高平さんの手によって生まれた。
カットしたワインボトルとダメージ加工した木材を組み合わせたスピーカーは、まるでヴィンテージ家具のようなレトロなたたずまいが印象的だ。電源不要で、スマートフォンから発する音色をクリアに増幅してくれるこの作品は、三重県で活動する作家の高平さんの手によって生まれた。
広告代理店で10年間営業に明け暮れた高平さんは、2010年に縁あって出身地の東京都から三重県へと移住。毎朝、家の近くの海岸を散歩したり、ジョギングしたりするのが日課となった。そこで、目についたのは漂着した流木。これを生かして「何か作れないか」と思ったのが、作家活動の始まりだった。
とはいえ、適した流木に毎回出会えるわけではなく、素材の調達が課題だった。アップサイクルできる他の素材を探すうちに、たどりついたのがワインのボトルだったという。
「もともとお酒が好きでよく飲んでいたのですが、空いた酒瓶がもったいないと感じていたんです。あるとき、ビンをカットした雑貨を作ってみたらおもしろいのでは、と考えました」。
はじめは、カットしたボトルの下半分を利用したランプやプランターなどを制作していた高平さん。次第にボトルの上半分が溜まっていき、これもなんとか使えないかと考えたという。思いつきでスマートフォンをあててみると、音がきれいに広がったのだとか。
「ただ、ガラスだけで作ってもおもしろくないなと。もともと流木の作品を作っていたのもあって、木と組み合わせるといいものが作れるんじゃないかと考えました」。
偶然のきっかけと、高平さんの経験値が組み合わさり、ガラスと木が融合した「ボトルスピーカー」が生まれた。
コンセントにつなぐ必要がないボトルスピーカーは、リビングやキッチンに置いたり、キャンプなどのアウトドアに持ち運んだり、さまざまなシチュエーションで暮らしを彩ってくれるアイテムだ。径の長さはもちろん、ガラスの厚み、首部分の角度、一つ一つ形状は違う。一見するとわずかな差に見えても、スピーカーからの音量や音色は異なる。高平さんは「そこが作っていておもしろいところ」だと語る。ビンの形状以外にも、木とガラスの間の空洞の加減で反響具合を調整し、きれいな音色を奏でる工夫を施しているのだとか。
「数字で測って科学的に分析したわけではないんですが、これまで1,000台以上のスピーカーを作りました。その経験で、微妙な違いを感じられるようになりました」。
今後挑戦してみたい作品について伺うと、「まずは今作っている作品の精度を高めていきたい」という高平さん。そのうえで、自分の生活の中で「あったらいいな」と思うものを形にするべく「アウトドア、インテリア、ガーデン、これらのシーンで使える作品をこれからも作っていきたい」と語った。