スペイン北部にあるバスク地方の湧き水から採れる天日塩「アンセストラル」と、南イタリアの小さな村で育てられた「古代小麦のパスタ」。どちらも、生産者が自然に寄り添いながら手掛けた逸品だ。これらの商品を取り扱うUEDA SHOWTENの上田大輔さんに話を聞いた。
スペイン北部にあるバスク地方の湧き水から採れる天日塩「アンセストラル」と、南イタリアの小さな村で育てられた「古代小麦のパスタ」。どちらも、生産者が自然に寄り添いながら手掛けた逸品だ。これらの商品を取り扱うUEDA SHOWTENの上田大輔さんに話を聞いた。
食品の輸入商社に勤める上田さんが、アンセストラルに出会ったのは出張で訪れたスペインだった。取引先に勧められて買ったところ、あまりの美味しさに感動したという。「現地に出向いて製造風景も見せてもらいました。塩づくりへの姿勢にも感銘を受け、日本で販売させてほしいとお願いをしました」。現地の生産者たちは、アンセンストラルのブランド化を目指し、四苦八苦していたところ。タイミングも相まって上田さんも立ち上げに参加、ブランディングに携わった。そして、2020年にUEDA SHOWTENを立ち上げ、日本での販売をスタートさせた。
普通、塩は海水からつくられるが、アンセストラルは海から100kmも離れた山の中でつくられている。その理由は、山の地下に眠る2億2000万年前につくられた岩塩層にある。「この地域は、冬に雪が積もります。雪解け水が地下の岩塩層を通り、湧き水ならぬ湧き塩水が出てきます。塩分濃度が約24%と非常に濃く、塩田に流して太陽と風にさらすだけで、塩の結晶ができるんです。人の手をほとんど使わず、自然の力で生み出されるのが特徴ですね」と上田さん。
火を使わない、自然の成り行きに任せたつくり方は、古代ローマ時代から変わっていないそうだ。先祖代々という意味の商品名には、このつくり方をずっとつないでいきたいという想いが込められている。「自然が破壊され、山が汚れると雪解け水も綺麗じゃなくなり、塩がつくれなくなってしまいます。生産量は自然により左右されますが、伝統をつないでいくために、必要以上に手を加えることはしません。生産者たちの自然とともに生きていくという姿勢に共感しました」。
食品の輸入商社に勤める前に、イギリスで住んでいた上田さん。職場が一緒だったイタリア人の友人の縁でつながったのは、もうひとつの看板商品である古代小麦のパスタだ。
「このパスタは、南イタリアの小さな村・サンニオで作られています。この街は移民や難民が押し寄せ、治安の悪さが問題に。また、遺産相続で放棄された土地もたくさんあり、野生のイノシシによる被害も相次いでいます。こういった問題を解決するために友人が農業法人を立ち上げたという話を聞きました。移民・難民と一緒に放棄地を耕作し、古代小麦を育てパスタを作っています」。
治安の改善や難民の雇用創生につながると、この活動の功績が認められ、国連の出先機関である国際土地連合から表彰も受けたという。「国をより良くしたいという友人の姿勢に感銘を受け、アンセンストラルに次いで取り扱うことを決めました」。
取り扱う商品はアンセストラルのほか、古代小麦のパスタとオリーブオイルの3点のみ。「ただおいしいだけでは、僕は納得しません。生産者がどういった姿勢で取り組んでいるのかを、仕入れる上での一番のポイントにしています。おいしさの背景にあるストーリーを知れば、買った人はもっと大事に食べるでしょうし、食べることの楽しさを知ってもらえればと思っています」と話す。
最後に上田さんは、「塩とパスタ、どちらの生産者も自分たちのいる環境をより良くし、それを後世につないでいくための取り組みを試行錯誤しながら続けています。僕もそれを手伝いたい。今後も彼らがずっとつくり続けられるように、日本で塩やパスタの良さと生産者の想いを伝えるのが使命だと感じています。一人でも多くの人に伝えていきたいと思います」と熱く語ってくれた。