写真越しでも木の香りが伝わってきそうなほど、木々が本来持つナチュラルな魅力が存分に引き出されたスツール。そんな逸品を作り出しているのは、saiの曽我部さんだ。「ヒノキの香りや風合いを暮らしの中で楽しんでもらいたい」との思いを込めた、彼女のものづくりについて聞いた。
写真越しでも木の香りが伝わってきそうなほど、木々が本来持つナチュラルな魅力が存分に引き出されたスツール。そんな逸品を作り出しているのは、saiの曽我部さんだ。「ヒノキの香りや風合いを暮らしの中で楽しんでもらいたい」との思いを込めた、彼女のものづくりについて聞いた。
曽我部さんの作品の素材となるのは、林業で生じるヒノキの端材だ。木材として加工されたあとに生じる端材、特に木の根元に近い部分は、通常市場に出回らずに捨てられてしまうことがほとんどだという。
材料となるこれらの端材は、曽我部さんが愛媛県で林業を営む実家から調達したもの。曽我部さん自身も、子どものころから木に触れ、親しめる環境で育ったという。ものづくりを始めたのも、曽我部さんの父が「この捨てる部分を何かに使えないか」と話したことが一つのきっかけになった。
一見すると「木をそのまま切り出した」ように映るスツールだが、実はできあがるまでに長い時間を要する。特に、端材の樹皮をむいた後に乾かす工程は、自然乾燥でじっくり水分を飛ばすため、「切ってすぐの木だと、半年以上かかります」と曽我部さんは語る。そうして水分を飛ばした木材を、丁寧にサンドペーパーで磨いて仕上げていく。完成したスツールは、木の質感がリアルに残った外観である一方、手で触れてみるとなめらかで優しい感触がする。木目の風合いや香りを損なわないよう、オイルや塗料を塗らない無垢仕上げにしている点もポイントだ。
曽我部さんは、ヒノキのスツールを「暮らしの中で使ってほしい」と語る。座るためのスツールとして活用するだけでなく、ベッドやソファの隣に置くサイドテーブルやインテリアとして、ヒノキの香りを楽しんだり、木の風合いを楽しんだりする人も多いという。使い方次第で多彩に楽しめる点もこのスツールの魅力だ。
スツール以外に人気なのが、ヒノキの端材をさらに細かく砕いたウッドチップ。ヒノキといえば、消臭や防虫に効果があることでも知られている。これらのウッドチップは、その効能を存分に生かせる商品だ。袋タイプのものはクローゼットに吊り下げたり、瓶入りのものは芳香剤として置いたり、といった具合に活用できる。数ヶ月間使用して香りが薄くなっても、アロマオイルを垂らすアロマディフューザーとしても使える。「ヒノキは捨てるところがありません」と曽我部さんはその魅力を語る。
今後挑戦してみたいことを曽我部さんに聞くと、キャンプ用途にも使えるスツールやインテリアグッズの製作を挙げた。やはり根底にあるのは、ヒノキへの熱い思い入れだ。「ヒノキの香りや効能が好きなので、それを楽しんでもらえるような商品をこれからも作って、広めていきたいと思います」。