鮮やかな絵付けが施された器は、まるで一種の絵画作品のようだ。独特の雰囲気を放つ「杜のうつわ」を手掛けているのは川原将太さん。日常の中にアート作品を届けることが活動のテーマだ。
鮮やかな絵付けが施された器は、まるで一種の絵画作品のようだ。独特の雰囲気を放つ「杜のうつわ」を手掛けているのは川原将太さん。日常の中にアート作品を届けることが活動のテーマだ。
大胆に配色された器は一つひとつ異なる表情を持ち、眺めているとつい引き込まれそうになる。実は、川原さんの本職は画家。数多くの名だたる画家を輩出した京都市立芸術大学で絵画を学んだ経歴の持ち主だ。「キャンバスではなく陶器に描くっていうアプローチの作品なんです。『画家が作った器です』と説明すると、みんな妙に納得していただけます」と笑いながら語る。
芸大を卒業してから30年近く活動を続けてきた川原さん。一方で、「彫刻や染め物など、いろんなジャンルに挑戦してみたい」との思いもあったという。そんな折、当時拠点にしていた高知県で、高齢で陶芸をやめようと考えていた女性と知り合い、設備を丸ごと引き取ったのが陶芸へのチャレンジを始めたきっかけだった。
始める前から「こんな器を作りたい」とのイメージは持っていたものの、陶芸は未経験だった川原さん。道具や材料の扱い方、顔料や窯の焼き加減で微妙に異なる仕上がりの違いも、全て手探りで覚えていった。「今思えば、本当に遠回りでした。でもそうやって試行錯誤するのも独学の醍醐味ですよね」と川原さんは当時を振り返る。
陶芸に取り組む前に、海外を放浪していた時期もあったそう。オーストラリアなどの農場に滞在しながら、田舎のライフスタイルとアート活動の相性が良いと気づき、自身のライフスタイルの確立へとつながった。「田舎の暮らしは時間の流れがゆるやかでストレスフリーなので、ものづくりにもアートにもいい影響があると感じています」。
「身の回りの自然素材をうまく活用したい」というのも川原さんのこだわりだ。例えば、木製の取っ手の素材には、現在拠点としている岡山県の工房近くで手に入る間伐材などを使用している。ほかにも、地元で開催している子ども向けのワークショップでは、拾い集めた河原の石を絵付けのキャンバスとして使うこともあるという。
今後チャレンジしてみたいことを伺うと、「大きなサイズの壁画を描きたいですね。もう構想はあるんですが、どこかで描かせてもらえないかな」と微笑む川原さん。うつわをキャンバスに見立てて描く器づくりは、彼のアート活動にも密接につながっている。