お洒落なロゴや可愛いお米のキャラクターがプリントされた、ユニークなバッグ。実は、これらすべて、日本各地の農家が使用し、使用後は廃棄される予定だった米袋をリメイクして作られた商品だ。全国的にも珍しい、米袋バッグブランド「BOCCA」を手掛ける中村弘奈さんに、ブランド設立にいたるまでの経緯や現在のプロジェクトの動向について話を伺った。
お洒落なロゴや可愛いお米のキャラクターがプリントされた、ユニークなバッグ。実は、これらすべて、日本各地の農家が使用し、使用後は廃棄される予定だった米袋をリメイクして作られた商品だ。全国的にも珍しい、米袋バッグブランド「BOCCA」を手掛ける中村弘奈さんに、ブランド設立にいたるまでの経緯や現在のプロジェクトの動向について話を伺った。
「もっと多くの人に、農家の方たちが想いを込めてデザインした米袋を知ってもらいたい」と語るのは、米袋バッグブランド「BOCCA」の中村弘奈さん。本来、米袋とは、米農家が米を入れて貯蔵したり、輸送したりするための業務用の袋。この米袋は米の重量に耐えられるよう、丈夫で破れにくい構造だが、衛生上の観点から一度使用すると、再度米を入れて使用することはできない。中村さんは全国で廃棄せざるを得ない状況にある、農家の米袋をバッグにアップサイクルし、新たな使い手の元へと届けるというプロジェクトを行なっている。
中村さんが米袋でバッグの制作を始めたのは、コロナ禍で「ステイホーム」が推奨された、2020年。たまたま、自宅の片隅にあった米袋を見つけ、「何かものづくりはできないか」と思い立ち、インテリアや子どもの自然採集用にいくつかのバッグを制作。バッグの写真を自身のInstagramに投稿したところ、「自分にも米袋バッグを作ってほしい」というオーダーが舞い込むようになったという。
その後、米袋バッグのオーダーメイドとSNS発信を続けているうちに、米袋の再利用を希望する農家の目に留まり、「自社の米袋をバッグにリメイクできないか」という相談が寄せられた。こうしてスタートした、農家と共同でつくる米袋バッグのプロジェクトはSNSなどを通じて見る見るうちに広がり、現在では、北は北海道、南は鹿児島まで、全国約25軒の米農家や米店から依頼を受け、オリジナルバッグを制作している。
「BOCCA」の米袋バッグは、防水性と耐久性を高めるため、柿渋で米袋にコーティングを施した後、中村さん自ら縫製を行っている。柿渋とは、渋柿から搾りとった液で、日本で古くから紙や木の防腐・防水剤として使われている天然の塗料だ。天気のよい晴れた日に、手作業で柿渋を塗り、乾燥させる、この作業を3回以上繰り返す。作業時の自然光の加減によって、仕上がりの色が変化するのが米袋バッグ制作の難しいところだという。柿渋を何度も塗り重ねた米袋はほのかに光沢があり、使い込むと革製品のような質感になる。
バラエティ豊かな米袋バッグのデザインは、すべて元々の米袋のプリントをそのまま生かしたもの。「プロジェクトをはじめてから、全国に自分と同世代の若手の農家の方がたくさん居て、米袋のデザイン一つをとっても、皆さんオリジナリティを出されていると気付いた」と中村さんは話す。米袋という意外なツールを通じて、農家と一般消費者を結び付け、情報発信を続ける「BOCCA」の米袋バッグプロジェクト、今後の更なる展開に注目したい。