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カラフルなデザインが目を惹く日傘 -nuts-

カラフルな生地に大ぶりの毛糸のポンポン。個性的なデザインで目を惹くこのアイテムは、実は日傘。古いシーツやカーテンを再利用し、手作業で仕立てられており、重い病気を抱えて外で働くのが難しい人や、引きこもり状態の人たちが製作を行っている。発起人の藤村さんの日傘作りの根底には、かつての自分のように悩む誰かに寄り添い、「元気」を届けたいという想いがあった。



 「20代の頃は育児ノイローゼで引きこもりがちでした」と話す藤村さん。幼い頃に両親に育ててもらえなかった経験から子どもへの接し方に悩み、さらに子どもの病気なども重なった。頼る人も育てた経験もない中で孤独な日々を過ごし、子どもを抱えてベランダから飛び降りようかとも考えるまで追い詰められていた彼女にとって、年に数回出店するフリーマーケットが唯一の社会との接点だった。
 ある日、出店先で客の一人が売り場を指差して尋ねた。「リュックの中に入ってるコレ、いくらですか?」。そこにあったのは、遊びで作った手縫いのポーチ。「ごめんなさい、それ遊びで作った物やから下げますね」と言うと、「それが欲しいです。布の合わせ方がかわいい」と言われた。驚きながらも代金をもらわずに譲ると、さらに友人の分まで注文が入った。洋裁の経験もなく、遊びで作ったポーチだったが、その一点ものの風合いが人の心を掴んだ瞬間だった。

-Profile- nuts 藤村絵理香さん
兵庫県尼崎市出身。『頑張っている女性たちが作る 頑張る女性の為の日傘』をコンセプトに日傘ブランド「nuts」を立ち上げ。2025年に「第一回 LOHAS Festa Award」を受賞。

 求められるまま作り続けるうちに、布を買いに外に出るようになり、作り方を調べるために図書館へも通うように。やがて、手作り仲間とマルシェに出店するようになり、同じように子育てをしながら製作に励む女性たちと出会った。「友達ができたことが嬉しくて。一人で子育をしてたので、そういう相談ができたりして。気づけば、私、引きこもりじゃなくなってるって気づいたんです」。
 “かつての自分のように苦しんでいる人に、元気になってほしい”。そんな想いから、藤村さんは自宅でワークショップを始めた。なんと当初は、参加者に交通費としてお金を渡して来てもらっていたという。「来てほしいのは色んな理由で外に出られないひきこもりの人たち。でもなかなか来てくれなくて。『お金もあげるし作った物も持って帰れるよ』って言って。大胆でしたね」と笑う藤村さん。次第に人は集まるようになったが、善意だけでは活動は続かず貯えがつき始めた時に決意する。「この場所をなくしたくない。だったら、みんなでここで何かを作って、それが売れたら活動を永遠に続けていけるんじゃないか、と思ったんです」。

 収入を得るためのモノづくりとして目に留まったのが「日傘」だった。かつて、ロハスフェスタで買った日傘の評判が良かったことをヒントに、オリジナルの「カラフルでかわいい日傘」を作ることに決めた。しかし、知識も技術もゼロ。傘職人の元を訪ね歩くも、門前払いの日々が続いた。師が見つからないなら、自分でやるしかない。市販の傘を200本以上分解し、構造を研究する孤独な日々が5年にも及んだ。「めっちゃしんどかったです。お金もないし。でも『こんな大変なこと、誰もようせえへんで』っていう自信がありました」と振り返る藤村さん。
 壮絶な半生や孤独だった日々、そしてそこを乗り越えた経験が彼女を強くした。「昔は『私の人生、ハズレやな』と死を考えたこともありました。でもある時に『いや、これは私は選ばれた人やからや』と考えられるようになったんです」。苦難の連続は、ハズレではなく「当たり」だと考えた瞬間、世界が180度変わった。「困ってる人たちのために、私が選ばれたんやわって。そう思えたとき、過去の辛い経験は“全部私のキャリアやん”って笑えるようになりました」。

工房で作業中のみなさん。

 長い研究の末に日傘作りのノウハウを得て、仲間と共に活動を開始。家を出られない人には資材を届け、チームで製作を行った。地域から始まった活動は全国の百貨店へと広がっている。売り場ではセールストークよりおしゃべりがメインで、藤村さんの人柄に惹かれて、話すためだけに通う客も多い。「事業家としてじゃなく、周りのためにちっちゃいことをやってたら、大きな規模になっていって。だから、みんなも何かやってみようよ、って。そのきっかけを届けられるようになればなぁと思うんです」。藤村さんと働く仲間も、日傘を買いに訪れるお客さんも、人とのつながりを実感し、元気をもらっている。1本の日傘から始まった物語は、これからも多くの人の心に太陽を灯し、温かな輪を広げていくだろう。