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地域に根差すロハスフェスタ、SDGs達成に向けた今後を考える

世界共通の目標として推進されているSDGs(持続可能な開発目標)。毎年春と秋に開催している「ロハスフェスタ万博」でも、SDGsの目標達成につながる様々なプログラムを行っている。「誰ひとり取り残さない」未来を実現するために、今後どう取り組めばいいのか。日本に「ロハス」を紹介し、現在は同志社大学で教鞭を執る大和田順子さんに話を聞いた。



「ロハスフェスタ」の名称の元になっている「LOHAS」という言葉。元々は1990年代、アメリカで生まれた経済用語「lifestyles of health and sustainability(健康的で持続可能なライフスタイル)」の頭文字で、この言葉を2002年に初めて日本に紹介したのが大和田さんだ。ロハスフェスタの実行委員でもある大和田さんは、今回あらためてロハスフェスタへ視察に訪れた。

「2006年に万博で始まったロハスフェスタを初めて視察したときは、家族連れで1日楽しめるイベントという印象でした。その印象は現在も変わりませんが、ゴミを減らすためのリユース食器の持参や、料理で出た廃油などを持ち込む人がたくさんいるのを見ると、楽しみながらSDGsを学べるロハスフェスタが地域により定着してきたと感じます」と大和田さん。


-Profile- 同志社大学 政策学部・総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーションコース教授 大和田 順子さん
百貨店、シンクタンク、英国化粧品ブランド等で20数年マーケティングの実務を経て独立。2002年、日本にLOHAS(ロハス)を紹介。2006年、地域力創造アドバイザー(総務省)。2022年総務省のふるさとづくり大賞で個人賞を受賞。

大和田さんが大学の授業の中でアンケートをとったところ、「SDGs」や「サステナブル」といったキーワードへの高い関心が見られた。「身近に様々な天災があることから、災害復興に関する項目への関心が最も高かったですね。また、サステナブルファッションに関する意識が高かったのも印象的でした」。衣料品のリサイクル、アップサイクルなど、若年層にそういった価値観が芽生えているのを感じたという。

「その意味では、古着を回収して新たな人へとつなげる『xChange』の出展は、今の時代に合った取り組みでしょう。交換する服にエピソードタグを付けるのもおもしろいアイデアだと思います」と語った。

XChangeブースを視察する大和田さん

SDGsには「ウェディングケーキモデル」という考え方がある。スウェーデンの研究機関が提唱したもので、SDGsの17個の達成目標を「生物圏(Biosphere)」「社会圏(Society)」「経済圏(Economy)」の3層に分類している。この層で見ると、一番下の「生物圏」は、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」の4項目で構成されている。つまり、気候や水の課題解決、陸と海の豊かな生態系が、持続可能な発展の基盤にあると言える。

(Credit: Azote Images for Stockholm Resilience Centre)

大和田さんは、このウェディングケーキモデルから「ソーシャルイノベーションの源泉は農山漁村にある」との考えを基本に据えて、昨年同志社大学で「SDGs時代のサステナブルな地域作り」という授業を開講した。「世界農業遺産や自然エネルギーなどの取り組みを紹介し、実際に日本の農山漁村でどんな取り組みが行われているのかを学生に教えています」。

当初は座学が中心だったが、「やはり、現場に足を運んで直接話を聞かないといけない」と考え、フィールドワークも実施することに。「最近では高槻市と姉妹都市の三方町(現・福井県若狭町)を訪問し、同町の三方湖で400年以上続くと言われる伝統的な「たたき網漁」の現場を視察しました」。

出展者から商品説明を受ける大和田さん

その他にも、京都府向日市で行われている竹林整備の活動に参加した。「竹は繁殖力が旺盛なため、放置すると他の植物の生育をさまたげるなど、様々な問題を引き起こします。学生たちと一緒に、竹を切り出して搬出する活動を行ったほか、タケノコやメンマ、竹垣や竹炭など、様々な活用方法を学びました」。

その後、活動に参加した学生たちから、「竹林プロジェクトを大和田研究室で立ち上げてください」という提案があったという。そこで、「今年度同志社大学で始まった『同志社SDGs研究プロジェクト』に応募し『竹林SDGsを通じたグリーンコモンズの創出』というプロジェクトを開始しました。放置竹林の整備をはじめ、伐採した竹を食品や工芸品に活用したり、竹林を『地域住民やボランティアが共有できる緑地スペース(=グリーンコモンズ)』を創り出すというコンセプトです」。

竹林のサステナビリティを考えるイベントに学生と共に参加。

大和田さんは、今年のロハスフェスタを視察して、「SDGsについて楽しみながらふれるコンテンツがさらに充実していました。何気ない体験から、気づきや関心が芽生え、自分に何ができるかを考える、意識の変化へとつながっていきます。ロハスフェスタはSDGsを広めるための重要な役割を担っているのではないでしょうか。私の授業のフィールドワークにもロハスフェスタでの体験を取り入れてみたいですね」。

実践を通じてSDGsを学ぶ

2022年秋、大和田さんが語っていた一つの構想が実現した。ロハスフェスタで実施する「学生SDGs」ブースに、同志社大学の学生たちが参加することになった。参加したのは、大和田さんが講師を務める「SDGs時代のサステナブルな地域づくり」を受講する政策学部の学生たち。企画段階から学生たち自らが参加し、ロハスフェスタの実行委員会との打ち合わせを経て、子ども向けに「おえかきエコバッグ」を作る企画が決まった。

「学生SDGs」に参加した、同志社大学政策学部のみなさん。

あらかじめ用意したエコバッグに子どもたちが絵を描くこの企画。参加した子どもたちはクレヨンを使い、エコバッグの上に思い思いの表現を自由に行っていた。多くの家族連れが足を運び、予定していた数がすぐに底を尽くほどの人気ぶりだった。

運営に参加した政策学部2回生の高内春菜さんに企画の趣旨を聞くと、「子どもたちが楽しみながらSDGsに親しめるものを考えました」とのこと。記念に持ち帰ったエコバッグを普段から使ってもらい、プラスチックゴミの削減といった環境問題をより身近に感じてもらう狙いだ。そのほかにも、SDGsにまつわる知識を学べるすごろくやカルタも用意して、楽しみながら学べる環境も整えた。

エコバッグづくりは大盛況。企画内容から携わっただけに、高内さんの説明にも熱がこもる。

大和田さんの授業では、ロハスフェスタの参加以外にも、前述した三方湖でのたたき網漁の視察や向日市での竹林保全活動など、さまざまなフィールドワークを選べる。そんな中、この企画を選んだ理由を高内さんに尋ねると「実践を通じて学びたい気持ちが強く、企画段階から自分たちで考えられる点に魅力を感じました」との答えが返ってきた。コロナ禍の影響を受けた年代の学生たちだからこそ、座学だけでなくフィールドワークで学べるこの授業は、貴重な経験ができる機会だと感じているそう。

SDGsについてクイズ形式で学べるすごろく。書店で偶然見つけ、今回の企画にピッタリなので即購入したのだとか。

「ロハスフェスタに参加する人たちは、年齢や住む場所などがそれぞれ違います。さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと触れ合うことで、大学の中では体験できない刺激を得られます」と充実した表情を見せる高内さん。また、「大和田先生の授業で学ぶ食料・エネルギーの持続可能性については、日々の小さな行動から取り組めることがたくさんあります」とも語っている。今回のロハスフェスタでの経験を、自分たちのSDGsへの意識をより深めるきっかけにもする考えだ。