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危機にあるボルネオの大自然。
日本から、一人ひとりの力で守りたい。 SARAYAの取り組み


SARAYA コンシューマー事業本部 マーケティング統括部 プロモーション部兼コミュニケーション本部 広報宣伝室 係長 諸江久美子さん

氷河期を耐え抜き、1億年前からの大自然が今もなお残るマレーシア・ボルネオ島。深い熱帯雨林には、何千、何万という多種多様な動植物が棲んでいる。ところが近年、アブラヤシのプランテーション(大規模農園)の拡大によって森が失われ、多くの動植物が絶滅の危機に瀕している。

その背景には、アブラヤシの実から採取できる、パーム油の世界的な需要増加がある。パーム油は主に食用として、チョコレートやポテトチップス、インスタントラーメンに使われ、化粧品や洗剤など非食用に使われるのはごくわずか。パーム油・パーム核油を原料とした「ヤシノミ洗剤」を生産・販売しているサラヤ株式会社は、あるテレビ番組の取材をきっかけに、その事実に気付かされた。微生物に分解されやすいことから「植物由来の原料で地球にやさしい」と謳った商品の裏側で、実は森が切り拓かれ、動植物はどんどん追いやられてしまっていた。

ボルネオ島に広がるアブラヤシのプランテーション。野生動物の棲み家である森は川辺のごくわずかしか無い。

「2004年、現地調査に行くと森は削られ、地平線の向こうまで見渡す限りプランテーションが広がっていました。そして、食べ物を求めて畑に入ってしまう動物は害獣として殺されてしまいます。現地の保護施設には、家族を失いひとりぼっちになってしまった子ゾウが。その光景に衝撃を受け、パーム油を商品に使う会社の責任として、何とかしなければと考えました」と、諸江さんは話す。

その後、サラヤは「ボルネオ環境保全プロジェクト」を立ち上げた。「お客様と一緒に自然について考え、取り組みたいとの思いがありました。そこで、売上金の1%がボルネオの環境保全に還元される仕組みをつくりました」。消費者は、ヤシノミ洗剤など対象商品を購入することで、ボルネオ保全トラスト(BCT)を通じて環境保全活動に参加することができる。

マレーシア・ボルネオ島だけに住んでいる世界一小さなゾウといわれるボルネオゾウ。絶滅危惧種に指定されている。

その核となる活動が、2007年から始まった「緑の回廊計画」だ。現在、森はプランテーションによって分断され、動物たちは森を自由に行き来することができなくなり、畑に囲まれた小さな場所での生活を強いられている。そこで、プランテーションを買い戻し、動物たちが自由に行き来できるように森をつなぐ。買い戻されてプランテーション化しないように保護された森は「サラヤの森」と名付けられ、現在総面積16.25ヘクタール、6号地まで広がっている。

また、水の苦手なオランウータンが川を渡れるように、日本の廃棄消防ホースを再利用して橋をかける「命の吊り橋」計画が2008年からスタート。住処を奪われたゾウや孤児となっているゾウを一時預かり育てるレスキューセンターも2013年に開所した。さらに、パーム油は環境と人権に配慮した「RSPO認証油」を使用し、持続可能な原料調達を行っている。

この春からは、ゾウのペーパークラフトを作る子ども向けのワークショップも開催。「遠く離れたボルネオのゾウを身近に感じることをきっかけに、地球環境に興味を持ってもらえれば」と諸江さん。

「当初は社内でも、売上金を環境保全に使うより社員に還元してほしいという声がありました。でも、環境保全に賛同してサラヤの商品を買ってくださるお客様もいます」。今では、こうした社会貢献活動をしているからこそのサラヤブランドなのだと、社員の理解も深まったという。「動物たちの生息に最低限必要な土地を買い戻すには、約200億円 の土地購入資金が必要です。現在、数社とともにこの活動を続けています」と諸江さん。

しかし、プランテーションは現地の人々の大事な働き口だ。プランテーションを森に戻すということは、その人たちの職を奪うことになるのではないだろうか。「もちろん、産業を成り立たせることも大切です。いけないのは無秩序な農園拡大。目先の利益だけで森を更地にすることです」。最近では、マレーシア政府が農園に関わる人たちに環境教育を行い、観光客を呼んで収入を確保しながら森を保全するエコツーリズムの考え方を現地の人に伝えているという。「便利さや快適さは必要です。でも、過剰な発展を求めず、人間たちの必要な範囲だけで生活をすれば、森をむやみに壊さずにすむのではないでしょうか」と諸江さん。

失われてしまった森を取り戻すには、相当な時間がかかる。しかし、今もできることがある。「私たちが意識を持ってものを作り、人と地球のためを思って作られたものを購入すれば、拡大を防ぐことができます。一人ひとりの心がけがあれば、地球環境がこれ以上悪くなることを防げると思います。まずは地球環境の現状を知ること、興味を持つことが大切なのではないでしょうか。子どもたちの未来のためにも、1億年前からの宝物をみんなで守っていきたいです」。

ヤシノミ洗剤 https://www.yashinomi.jp/
認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパンhttp://www.bctj.jp/

「ヤシノミシリーズ」をはじめ、対象商品の売上金の1%が、ボルネオ保全トラストを通じて様々な環境保全プロジェクトに使われている。
2013年に開所したレスキューセンターでは、プランテーションに迷い込んだゾウを救出し、最適な森へ帰すまでの間、一時的に保護→ケガの治療などを行っている。